今、目の前のことに心を込めなさい【さあ、みんなサーカスだぞ】


 

あなたのポケットから落ちるのを私は確かに見ました。

ここには他に人はいません。あなたが落としたんです。

きっと気づかないうちに百ドルがあって、それが落ちたに違いありませんよ

今、目の前のことに心を込めなさい【さあ、みんなサーカスだぞ】

この本は寝る前に読むと心が洗われます。

【今、目の前のことに心を込めなさい】自分の感情を良きものに変える より引用

 あるアメリカ人がこういう話をしてくれました。その人はもう年配の男性ですが、これは九歳の時の思い出です。

 小さい時、お父さんがサーカスに連れて行ってくれました。

家はそんなにお金持ちではありませんでした。

お父さんが、今日は特別にサーカスに連れて行ってあげるというので

九歳の男の子はもううれしくてたまらなかったのです。

 会場につくと、切符を買う長い列ができていました自分たちはその一番列の最後になりました

 すぐ前には、十人家族が並んでいました。

それはお父さん、お母さんと八人の子どもたちの、とても貧しそうな家族でした。

来ているものは質素でしたが、きれいに洗濯してありました。

その家族は貧しいながらも、きちんとした生活をしている人たちだと子ども心にも思いました。

「サーカスってところはね、ライオンがいたり、象がいたりするんだよ。

そうして象が鼻の先で輪を回したり、いろんな動物がいろんなことをするんだよ」

とお父さんは得意になって話していました。

 子どもたちは二人ずつ四列に並んで、うれしそうに聞いていました。

母親のほうは、はじめて家族全員でサーカスを見にくることができた、

そして夫がそういう稼ぎをして連れてきてくれたということが、誇らしげに見えました。

 いよいよ切符を買う順番が近づいてきました。その家族が買えば、次は自分たちです。

九歳の男の子は、とても待ちきれない思いでいました。

もうサーカスのざわめきが外まで響いてきます。

動物たちの鳴き声も響いてきます。

 十人家族のお父さんが、切符売り場のところに立ちました。

そして大きな声で誇らしげに、「大人二人、子供八人」と言いました。

それは後ろに並んでいる九歳の男の子のところまで聞こえてきました。

お母さんもうれしそうに側に寄り添い、子どもたちもわくわくしている様子でした。

 ところが突然、お父さんはさっきまでの威勢の良さがなくなって

うなだれてしまったのです。お母さんは何事が起こったかと思ってお父さんを見守り、

子どもたちはなんか様子がおかしいということで、しょぼんとしはじめました。

 そのお父さんはしばらく黙って地面を見ていました。しかし、今度はまた勇気を出して

切符売り場のところで顔をつけ、まるで切符売り場の窓の中を覗くようにして

「大人二枚に、子ども八枚でいくらですか」と聞きました。

その答えは他の人には聞こえなかったのですが、お父さんはその窓口から後ずさりすると、

方を落としてうなだれて下を向いてしまいました。

あれほど誇らしげに見えたその男の人が、小さく見えました。

 突然、九歳の男の子と手をつないでいたお父さんが、四列に並んでいた子どもたちの前を

通り越して、うなだれているお父さんの肩を叩きました。

「あなたのポケットから落ちるのを私は確かに見ました。

ここには他に人はいません。あなたが落としたんです。

きっと気づかないうちに百ドルがあって、それが落ちたに違いありませんよ」と言ったのです。

そのお父さんはただ黙って、手に置いてくれたその百ドル札を見つめました。

そして、相手の顔をじっと見て深く頷き、涙をぽろぽろ流して、

「ありがとうございます」と言いました。

 そのお父さんは紙幣を持って「大人二人、子ども八枚」と誇らしげな声で切符を買いました。

「さあ、みんなサーカスだぞ」と言って、子どもたちを先に中に入れ、

振り返って自分たちに深く頭を下げました。

そして夫婦はサーカスの中へ消えていきました。

 九歳の子の父親は子どもの手をとって、「さあ、うちに帰ろう」と言いました。

そしてお父さんと男の子は、そのままうちに帰ってきたのです。

 九歳の男の子は何も言いませんでした。

でも大人になった今、思い出してみると、自分はあのとき、

人生とはどのように生きるのかということを学んだといいます。

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